日々の記録

カナダの大学で人類学を中心に学んでいます

西洋のフェミニズムとコメディー

 

最近ずっと考えてる西洋と日本のフェミニズムについて書きたいと思います。一年生の時に人類学の教授と男女平等について話している時に、「フェミニズムはまだまだ白人(西洋)に限られたものなんだよね」と言われたことがあって、その時はよくわかりませんでした。日本でも男女平等実現への動きはありましたし、現状の実現結果の違いはあるにしても、西洋のフェミニズムが日本のものと別物だという考えがあまりありませんでした。しかし、そのことについて最近わかってきたことがあります。きっと私が西洋文化で進められてきたフェミニズムを学んでも、それをそのまま日本で生かすことはできなくて、日本には日本独自のフェミニズムが必要なのだと思います。

 

 

今、Women in Pop Culture というクラスをとっているのですが、風刺や皮肉の効いたコメディーは社会運動に効果はあるのか、という話でいくつかのビデオを見ました。

 

例えば、アメリカにとても有名な Amy Schumer 女性コメディアンがいるのですが、彼女は風刺やアイロニーを使ってポストフェミニズム(女性の権利や男女平等はすでに達成されたのでフェミニズムはもういらないという考え)を批判するような芸風のコント(skits)がよく見られます。 特に私が好きなものがYouTubeに挙げられていたのでここにリンクを貼ります。

www.youtube.com

地域によって見られないかもしれない、ということでタイトルだけでも載せておきます。Inside Amy Schumer - Dr. Congress

 

Amyが病院に来たところ、何人かの男性役員が彼女の健康診断をしようとします。そこで彼女が女性の健康委員会(Women's Health Committee)に女性役員はいないのかと聞いたところ、一人の男性が "That would be like letting the lions run the zoo". (そんなのライオンを動物園で走らせるようなものじゃないか)と答えるんですね。個人的にこの一文がすごく皮肉が効いていているなと思い、とても面白くて好きです。’女性’の健康診断のために当事者である女性がどうして一人もいないのか、という’当たり前’かもしれないけれど実現されていないこと、または全員が気がついていないかもしれないことを揶揄した表現だと思いました。また、ビデオを見てもらえるとわかると思うのですが、ところどころに女性への抑圧や女性を’人間として’みていないような社会への皮肉も表現されています。男性がタンポンのことを "Blood diaper" (血のおむつ)と言ったり、処女であると勝手に予想してAmyに飴をあげるところなど風刺が効いていておもしろいです。

 

他にはアメリカのシットコムglee" をパロディ化したようなものもありました。参考にのせておきます。面白かったです。

www.youtube.com

 

Rachel Parris というコメディアンのビデオも面白かったです。

www.youtube.com

 

 

私は英語を何年か学習してきて、英語ならではのジョークを面白いと思うようになってきましたが、コメディアンの全てのコントに笑うことはできませんでした。私はあまりテレビを見ないので西洋のポップカルチャーについての知識不足や、単純に文化への理解のなさ、または事前知識が必要だったり、コンテクストを知らないとわからないものあり、残念ながら全てを楽しめませんでした笑 

 

これらの風刺の効いたコメディは"satire"とよく呼ばれるのですが、社会運動の一つとして効果はあると思いますか?個人的に、自分の反対する思想や社会に対して批判できる体制があるのはポジティブなことだと思います。そして、アイロニーを使うことによって、女性がよく直面するダブルスタンダードに’おかしい’と気がつくかもしれない人が増えるのではないかなと思います(これは完全に自分の希望的観測なので、そうなって欲しいという願いも込めていますが。)

 

ただ、これらをじゃあ、日本社会でやってみようと誰かが始めても効果は少ないのではないかと思います。まず、日本には皮肉を面白いと思う文化があまりありません。そして、私が知る限り、社会批判の芸風を面白いと思う人が少ないように感じます。もしかしたら日本の芸人さんの中でも皮肉を使って社会批判をしている方がいるのかもしれませんが私はあまり詳しくないので、知っている人がいたら教えてください!

 

加えて、皮肉を楽しむにはある程度の予備知識が必要だと思います。そのアイロニーがなぜ面白いと思われるのかがわかるために、その国の文化や慣習を知っていないと理解するのは難しいです。そうなってくると、社会問題に興味のある人たちが皮肉を面白いと思える一方で、興味のない人には何も響かないのではないかなと思います。例えば、一つ目の動画で、Amyを処女だと勝手に思った男性が彼女を子供扱いして飴をあげますが、ジェンダーイデオロジーの中に処女や子供を無垢で純粋なものだと勘違いし、その考えを押し付けているという前提がないと、皮肉が伝わらずに面白くないのかなと思います。Amyがあえてそれを逆手に取り、そのイデオロジーが馬鹿馬鹿しいものだということを強調し描写しているのが伝わらない層があるのかもしれないなと思います。これは他の人の意見を聞いてみたいですね。

 

 

ここで紹介したAmyのskits シリーズはInside Amy Schumer というタイトルなのですが、それについての論文が書かれており、彼女のコメディーについての分析や限界が書かれていたので共有したいと思います。アクセスがある人は是非読んでみてください!ビデオと一緒に楽しむとより面白かったです。

 

Irony may be too confusing for audiences and ultimately promote inaction [and] ironic humor risks alienating audiences who are unable to decode the joke... [It is] never stable enough to eliminate any potential ambiguity and requires audiences to filter jokes through their own positionalities (Tully 352). 

 

Meg Tully. 2017. "Clear Eyes, Full Hearts, Don't Rape: Subverting Postfeminist Logics on Inside Amy Schumer." Women's Studies in Communication, 40(4): 339-358.

書かれているように、アイロニーは全ての人に通じるとは限らないんですよね。面白いの定義も曖昧ですし、ジョークの解釈が個人個人に委ねられている面が大きいです。他にもいろいろ問題点はあるのですが(ほとんどの題材が異性愛者で社会的特権のある白人からの目線で扱われていることなど)、今日はここまでにしておきます。

 

 

最近は日本のフェミニズムのためには何ができるのか、何が必要なのかということを考えているのですがとても難しいです。よくネットで”海外は男女平等が達成されていて日本は遅れている”といったような文章を見ますが、主語が大きいなと思いますし、日本以外の国でもまだまだ男女平等は達成されていないと思います。例えばアメリカにはアメリカならではの男女差別や男性に対しての強い”男らしさ”を求める文化など、様々な問題があります。

 

ただ、共通して言えるなと思うのは、社会が変わるには一人一人の意識が変わり世論が変わらないといけないのだということです。何を当たり前のことを、と思うかもしれないですが、私は社会の暗い不平等なニュースを目にするたびに落ち込んでしまいもうどうにもならないんだ…諦めてこの悲しい社会で死ぬまで生きるしかないんだ…となってしまいがちなんです(個人の話ですみません笑)。だけど、世論が変われば社会も変わるということを忘れないで生きていきたいなと最近思っています。今までは社会問題についていろいろいうのを躊躇う節がありました。だけども考えるだけではダメで、言わなきゃ変わらないし、もっとたくさんの人が社会や政治について話していけるようになればいいなと願っています。そのためには自分から始めよう、ということですね。

 

勉強することで、誰かに何か嫌なことを言われた時に、何がダメなのかを言語化できるようになり、きちんと口に出せるようになるのだと思います。今までに女性軽視なことや自分のアイデンティーについての差別的発言をされたときにどう反論していいかわからずに黙り込んでしまい悔しい気持ちになったことがたくさんあります。それを、勉強して一つずつ紐解いていくうちに自分は何が悲しかったのか、どうやって相手に伝えればいいのか、ということを学んでいるような気がしています。そして、今度は話せるようになっていきたいなと思います。勉強は自分自身を救ってくれるし守ってくれるものだと思っているので、周りの人間ともっとこういった話題が話せるようになりたいなと願っています!

そして私も無知な部分をなるべく減らし、自分が人を傷つける立場にならないように気をつけないなと日々感じます。勉強を始めてからより強く感じるようになりました。知らないことがたくさんありますし、自分のバイアスに気づいて落ち込むこともたくさんあります。他人と、自分のためにも、もっともっと勉強していかなければと思います。

 

脱線しましたが、今日はこの辺で!ではまた。